2025.06.09

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【イベントレポート】『仕事と介護の両立』親が70歳になったら知っておきたい7つのこと

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〜介護離職防止に向けて、リアルな経験談、専門知識、介護サービスに触れるイベントを実施〜

働く世代が直面する介護の問題。いつか訪れる“その時”に備えて、知っておくべきこと、心構えしておくべきこととは──。

TQコネクトは2025年4月、育児・介護休業法の改正を受け、東急不動産ホールディングスの社員向けに「親が70歳になったら知っておきたい7つのこと」と題したイベントを開催しました。
介護経験のある社員のリアルな体験談、介護の専門家による講義、人事部からの制度紹介、介護サービスの活用事例などを通して、“備える介護”の第一歩を後押しする内容となりました。

本記事では、イベント当日の様子を振り返りながら、誰にとっても他人事ではない「仕事と介護の両立」について考えるきっかけをお届けします。

トークセッション①
介護体験の共有「父の介護、両親の老老介護に直面して」

東急不動産株式会社 都市事業ユニット 都市事業本部 商業事業部 統括部長 松井康明 氏

当時、都内で生活、勤務していた松井さん。実家のある静岡では両親が二人暮らししていましたが、お父様が認知症と診断され、お母様による“老老介護”がスタートしました。認知症発覚の経緯、その後の進行、仕事との両立、準備しておくべきことについてリアルな体験談をお話しいただきました。

── お父さまの認知症に気づいたきっかけを教えてください。

松井:父とドライブしていた時に、初めて来たはずの場所で「よく来たところだね」と何度も言ったり、同じものを3つ買ってきたり。ある日には自転車で出かけたまま行方不明になって、一晩経ってから3〜4km離れたところで見つかることもありました。そんなことが何度か続いて、「あれ?」と思うようになりましたね。

── 施設選びはどのように進めましたか?

松井:施設を検討し始めた当初は、資産や生活環境へのこだわりからなかなか決断することができませんでした。いざ父の認知症が進んで選択肢が限られてくると、今まで言っていたわがままは通らないなと痛感しました。

父は認知症もありましたが、体調も良くなかったので、母と2人で入れる施設を探すのが本当に大変でした。結局、母が介助することを条件に、サービス付き高齢者住宅に入ることができました。

── 遠方に住みながら、どのように介護と向き合っていましたか?

松井:ケアマネジャーの方とこまめに連絡を取って、少しでも情報を得るようにしていました。あと、母からは毎晩のように電話がかかってきて、出られないときは妻が代わって出てくれていたのですが、妻も精神的にだいぶ参ってしまって……。

病院への付き添いも大変でした。高齢の両親2人では、診察で言われたことを理解しきれないことも多くて。付き添って、薬の飲み方などを改めて説明するようなこともしていました。

── 仕事との両立で苦労されたことは?

松井:施設から退所して自宅で暮らしていた時期に、夜中に父が椅子から落ちて骨折し、それを起こそうとした母も骨折したことがありました。夜中に車を飛ばして静岡まで行くことも何度もあって……。老老介護の大変さや、急な対応の多さを痛感して、また施設に入ったという経緯もあります。

── 職場では、どのように介護について共有していましたか?

松井:父が認知症だということは、万が一急に休む可能性もあるので伝えていました。コロナ禍で在宅勤務が多かったので、実家にPCを持ち込んで、仕事をしながら両親の様子を見ることもありました。

ただ、会社の介護制度についてはちゃんと理解していなくて……今思えば、もっと早くに調べて活用すればよかったと思います。

── 今振り返って、「もっと早くにやっておけばよかった」と思うことはありますか?

松井:やっぱり、両親が元気なうちにいろいろなことを話し合っておけばよかったですね。認知症になると、本人の判断力がなくなって、もう何も決められなくなります。銀行口座や相続のことなど、少し話しづらいことでも、元気なうちに話しておくことの大切さを痛感しました。

── これから介護に直面する方に伝えたいことは?

松井:今は誰にでも介護が降りかかる時代です。いざという時に引っ越すのか? 遠隔からでも支えられる体制があるのか? そういうことを事前にイメージしておくことが本当に大事です。

子育てとは違って、介護は情報交換の機会が少なく、いざ直面すると「誰に何を相談すればいいのか分からない」という状況に陥りやすいです。相談先を知っておく、頼れる人やツールを持っておくことが大切だと思います。

特に「顔を見て話す」って、本当に大事です。だからこそ、「TQタブレット」みたいなツールを活用するのが良いと思いますね。

トークセッション②
仕事と介護の両立〜親が70歳になったら知っておきたい7つのこと〜

大正大学 社会福祉学科 教授 宮崎牧子氏

続いて、宮崎先生より7つのテーマで介護に向かう心構えについてお話しいただきました。

①老いていく親と子どもが織りなす時間と受け止めよう

介護の時間は、ただ大変なだけの時間ではありません。親子が一緒に過ごせる、かけがえのない時間でもあります。看取りの後に「やっぱりあの時間があってよかった」と思えるような、そんな日々を一緒に作っていってほしいです。今の日本は長生きが当たり前の社会。だからこそ、親と過ごす時間を前向きに捉えて、準備をしながら仕事との両立も考えていけるといいですね。

②老親の希望は元気なうちに聞いておこう

親と子で「どうしたいか」のイメージが違うことはよくあります。たとえば、介護を誰が担うのか、土地やお金のことをどうするのか。話しづらい話題ではありますが、元気なうちに聞いておくことが何より大切です。あとから「聞いておけばよかった」と後悔することがないように、早めに話し合いの機会を持ちましょう。

③高齢者福祉制度や介護保険制度を知っておこう

親が介護世代ということは子ども世代も50歳前後。自分の老後の準備でもあります。介護関連のガイドブックや自治体の相談先情報を入手して仕組みやサービスを理解しておきましょう。特に親御さんと居住エリアが違う場合は必ず確認し、連絡先を実家に貼っておくなど準備しましょう。

④退院先探しが大変なことを知っておこう

親が突然入院し、退院後の行き先に困るというケースはとても多くあります。脳卒中などで介護が必要な状態になると、すぐに在宅で対応するのは難しいこともあります。そんな時は、病院の医療相談室やソーシャルワーカーに相談して、使える制度や施設を一緒に考えていきましょう。事前にそういった選択肢を知っておくと、慌てずに対応できます。

⑤親の変化を見逃さないようにしよう

実家に帰った時には、ぜひ家の周りやキッチン、冷蔵庫の様子をチェックしてみましょう。掃除や整理整頓など、「あれ? 前はこんなことなかったのに」という小さな違和感が、介護のサインになることもあります。何気ない会話の中でのつまずきや忘れっぽさも含め、日常の変化に気づくことが、早めの準備に繋がります。

⑥認知症への正しい理解をしよう

認知症は絶望することではないという意識が大事です。また認知症になると短期記憶は薄れてしまいますが昔の楽しかった思い出など長期記憶は覚えていることが多いです。確かに大変なことも多いですが良い部分もみながら向き合っていただきたいです。

⑦介護は一人で抱え込まないようにしよう

介護は突然やってくることもあれば、少しずつ始まることもあります。そして、どれだけ続くのか先が見えないのが介護の特徴です。子育てとは逆に、時間が経つほど負担が増えることも多いのが現実。だからこそ、誰かと話せる環境を持ってください。家族や職場、友人でも構いません。「一人じゃない」と思えることが、心の支えになります。

休暇制度・補助制度のご紹介

東急不動産ホールディングス グループ人事部

介護に直面した際に活用できる休暇や働き方、給付金の制度について人事より紹介しました。
国として認定されているものに加え、会社独自で運用している制度もあります。あらかじめどんな支援の仕組みがあるのかを理解し、介護と仕事の両立に向けて準備を進めていくことが重要です。

TQタブレット開発の裏側にある原体験と利用者の声

TQコネクト 取締役副社長 江部宗一郎

私は2013年に東急不動産に入社し、2021年に社内ベンチャー制度の第1号案件としてTQコネクト社を設立。「TQタブレット」を開発しました。「TQタブレット」は2024年5月から販売を開始していますが、すでに累計販売台数1,000台を突破し毎月100件を超えるペースでご購入いただいています。

このタブレットを開発するきっかけとなったのは、私自身の原体験でした。祖母がコロナ前から介護施設に入居しており、感染対策の影響で面会ができないまま、2年前に他界しました。結局一度も会うことができず、非常に悔しく、寂しい思いをしたことが忘れられません。こうした経験をされた方は私だけではないはず。遠く離れていても、顔を見て話ができる──そんな手段を提供したいという思いから「TQタブレット」は生まれました。

TQタブレットの特徴

最大の特徴は”タブレット側の操作は一切不要でテレビ電話ができる”ことです。

高齢者向けの操作が簡単なデバイスは世の中に数多くありますが、ボタン操作が必要な時点で使いづらさを感じる方も多くいらっしゃいます。「TQタブレット」では、タッチレスで通話が開始されるため、寝たきりの方や指の動きに制限がある方でも無理なくお使いいただけます。さらにSIMを内蔵しているため、Wi-Fiの有無を気にせず、届いたその日からすぐに使用できる点も支持されています。

実際にご利用いただいている方の多くは、離れて暮らすご家族と介護中の親御さんをつなぎたいという思いから導入されています。利用者の中には要介護1〜4の方まで幅広くいらっしゃいます。

タッチレスでテレビ電話がつながる

ご家族が専用アプリから発信すると、約10秒後に自動でタブレットがつながります。ご本人が操作する必要はなく、必要に応じて着信を切ることもできます。

メッセージ付き写真の共有機能

「通話するほどじゃないけど、ちょっと伝えたい」そんな時には、写真にメッセージを添えてタブレットへ送信可能。受信側は操作なしで、内容を自然に確認できます。たとえば「病院行ってくるね」「薬飲んだ?」といった日常の一言が、心の距離をぐっと縮めてくれます。

このように遠距離介護や面会制限がある方にも、テレビ電話を楽しんでいただいています。

要介護4以上の方が「TQタブレット」でご家族とコミュニケーションを取られている様子

ご利用中のご家族の声

  • 話ができて嬉しい!と言っています。施設の方曰く、テレビ電話がかかってくると喜んでいて、実際につながって顔をみるとニコニコしてくれています。喜んでいることが伝わってきます。
  • お子さんが遠くにいる友達にも勧めているようです。
  • 一人でいると不安になって大人しくなってしまっていましたが、以前の明るさや自信を取り戻してくれました。今までは声だけの電話で良いんじゃない?と思っていたけれど、 顔を見て身振り手振りしながら話すことでこんなに変わるんですね。
  • 遠くにいるけれど、身近にいる感じになれます。今まではタブレットを買ってもしまい込んで全然使わなかったのが、TQタブレットだけは場所を自分で設置しています。

こうした声の数々が、「TQタブレット」がもたらす“対話のある介護”の価値を物語っています。今後も、利用者の声を大切にしながら、さらなる改善・展開を目指していきたいと思います。

東急イーライフデザインが運営するシニア向け住宅の紹介

東急イーライフデザイン 運営推進部 医療看護担当部長兼ケア品質向上室室長/順天堂大学医療看護学部 慢性疾患看護専門看護師・介護支援専門員 堺恭子 氏

介護と聞くと「大変そう」「いつか突然やってくるもの」と思いがちですが、実際には“いきなり要介護”ではなく、その前段階である「フレイル(虚弱)」を経て進行していきます。実はこの「フレイル」は適切な支援があれば健常な状態に戻る“可逆性”があると言われています。

フレイルには、運動・栄養・社会参加という3つの要素が影響しあっています。単に運動をするだけではなく、栄養バランスを整え、人とのつながりを持つことが大切です。

東急イーライフデザインが運営するシニア住宅では、順天堂大学との共同研究を通じた運動プログラムを実施しており、入居者が継続的に健康維持に取り組める体制を整えています。体操教室や体力測定のほか、地域の方も巻き込んだイベントや季節のプログラムなど、社会参加の場づくりにも力を入れています。

また、健康を支える基本である「食事」にも注力。日々の食事提供により、体調を崩しやすい時期やコロナ禍でも栄養状態を安定的に保つ環境を整えています。

さいごに

リアルな経験談、専門家による講義、そして介護者と要介護者の心の距離を近づける「TQタブレット」のご紹介や利用コメント、東急イーライフデザインが運営するシニア住宅をご紹介した本イベント。
介護に向き合うビジネスケアラーに寄り添い、介護への意識を高め前向きに考えるきっかけとして今後もこういったイベントを開催していければと思っています。

TQコネクトは、介護離職防止に向けたイベントの企画・運営サポートを行っています。
開催にご興味がある企業の方は、以下のメールアドレスへお問い合わせください。

contact@tqconnect.co.jp